八:「てぇへんだ、てぇへんだ」
熊:「おう、ハチ、どうしたんだい、そんな蚊の鳴くような声で、それじゃあかわら版屋は勤まらねえじゃねえか」
八:「だって、大変なんです。」
熊:「おいおい、威勢のいい江戸弁はどうしちまったんだい。」
八:「四回目でかわら版のネタがなくなっちまったんだよ」
熊:「そいつはてぇへんだ」
八:「だから、さっきから大変だと言ってるでしょう」
隠居:「おや、二人ともどうしたんだい、」
八:「こりゃご隠居どうも」
隠居:「ハ五郎さんのかわら版、ありゃなかなか面白いんで、わたしゃいつも楽しみにしてるんですよ」
熊:「それなんですよご隠居、このハチの野郎がね、かわら版のネタが無くなっちまって元気がねえんでさあ」
隠居:「そりゃあ大変だ、どれ今回は私が一つネタをさしあげましょうかネ」
八:「ご隠居ほんとですかえ」
隠居:「おまえさん達は、種子島を知ってるかい」
熊:「種子島と言やあ、九州の南にある、、」
隠居:「そう、その地名に由来しているんだが、火縄銃のことさ」
八:「火縄銃なら一度お城の近くで見た事がありまさあ」
隠居:「その火縄銃が日本に伝わったのは何時のことか知ってるかい」
熊:「そんな事ハチと俺に聞いたって。俺らは一緒に寺子屋に通っちゃあいたけど、ほとんど遊んでばっかでして、」
隠居:「日本に鉄砲が伝来したのは、天文十二年、西暦で言うと、一五四三年のことさ。」
熊:「ご隠居、西暦はまずいんじゃないですか、今は江戸時代ですぜ」
隠居:「ばかを言うでないよ、西暦で言わなきゃ読む人が分からないじゃないか、臨機応変だよ。この年に、ポルトガル人が鉄砲を伝えたと正史ではなっているんだが、実はその三十年以上も前に鉄砲を手にしたと言う記録がこの三河にあるんだな」
熊:「ほんとですけえ」
八:「何処にあるんです」
隠居:「それはおまえさん達、このかわら版を買って読んでくれなきゃあ」
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